発掘調査速報

むつ市酪農(3)遺跡

2021年10月31日

酪農(3)遺跡で検出された環状列石の構成礫がどこから運ばれてきたのか非常に興味深い問題です。今年度は遺跡の調査と並行して、地質・岩石学に詳しい調査員の先生と石材調査を行いました。今回は10月に行った調査について紹介します。

写真①

写真②
環状に配置された礫は概ね50㎝以上あり、大きなものでは1mを超えるものもあります。

このような大型の礫は河川の中流域から上流域に分布していると予測されたこと、使用されている石材はデイサイトが主体を占めていることから、調査地を次の3か所に絞りました。 ① 遺跡から一番近くに流れている青平川の中流域 ② 遺跡から離れているが河川沿いにデイサイトが分布している戸沢、大川目川流域 ③ デイサイトが広く分布している恐山山地南端の釜臥山周辺(水源池公園周辺) 10月の調査では①の青平川中流域、②戸沢、大川目川流域の調査を行いました。 結果、①青平川中流域ではデイサイトとは質の異なる玄武岩系のものが多く、構成礫に近いものは確認できませんでした。 一方、②戸沢、大川目川流域の調査では、構成礫に非常によく似た礫を確認することができました。ただ、調査地点が川の下流域であったため、構成礫のような大型のものは見つけることができませんでした。また、河川が細く、上流域まで行ったとしても大型の礫がある可能性が低いと思われました。

写真③
①、②ともに可能性が低いと思われたことから、11月に③の釜臥山周辺(水源池公園付近)の調査を行う予定です。ちなみに、水源池公園内にある明治時代に造られた国の重要文化財『旧大湊水源地水道施設』沈澄池堰堤(ちんちょうちえんてい)は近くから切り出した安山岩を使用して造られています。詳細は11月の調査を待たなければなりませんが、③釜臥山恐山周辺には安山岩とデイサイトが広く分布していること。堰堤を作ることができるほど大型の礫が豊富に産出されていることなどから、構成礫の産地である可能性が高いのではと期待しています。


酪農(3)遺跡では縄文時代後期初頭から前葉のフラスコ状土坑が今年度の調査で40基ほど検出されています。この中で特徴的な遺物が出土した土坑をいくつか紹介します。

写真④

写真⑤
土坑の検出面から土偶の胴部下半が立った状態で出土しました。

写真⑥

写真⑦
上部及び頭部がないかと注意して探したところ、それらは見つかりませんでしたが別個体の胴部が出土しました。

写真⑧
底面付近に礫が巡るものが検出されました。

写真⑨
礫が出土するものとしては他に、開口部付近に大型の礫を縦位に入れているもの。

写真⑩
土坑の中心部に石皿の破片が埋められているものなどがあります。

写真⑪
貝が出土した土坑もあります。

写真⑫
アサリやハマグリを主体としていましたが、他にカキや魚骨、小動物と思われる骨も出土しました。


写真⑬

写真⑭
現場周辺の木々も色づき始めてきました。このように晴天が続いてくれたら助かるのですが・・・。これから、天候が悪い日も増え、寒くなっていく事と思いますが、貴重な発見を見逃すことのないように調査を進めていきたいと思っています。

2021年10月10日

写真①
環状列石の調査もほぼ終了し、平場の遺構検出作業を行った結果、土坑や小穴が400基ほど検出されました。白い点線範囲が、概ね環状列石の範囲になります。列石周辺には柱穴と考えられる大中小のピットが広がっており、列石内部には比較的規模が大きい土坑が検出されています。

写真②
竪穴建物跡は環状列石の外側にあたる場所から6棟ほど検出されました。出土遺物からいずれも後期前葉の建物跡と考えていますが、このうちの2棟は環状列石が構築されている整地層の下位から検出されていることから、列石以前の建物跡といえます。残りの4棟についても、層的な検討を要しますが、現在のところ列石構築以前のものと捉えています。
昨年度の調査で、後期初頭期の竪穴建物跡が検出されていることから、酪農(3)遺跡は後期初頭から前葉期までは建物跡を伴う『集落跡』として機能していたと考えられます。
それが、後期前葉期のある段階で建物跡を埋め、環状列石を伴う『祭祀の場』と変化したことが分かりました。

写真③
また、整地は沢地形を埋めて平坦にするほど大規模に行われていたことが分かりました。 上の写真は、沢地形のくぼんだ所に竪穴建物跡が造られていて、それを埋めるように整地されている状況が分かります。

写真④
列石内にある配石遺構の検出状況です。土器中央から石棒状の礫が横になった状態で出土しています。 この礫が立っていたものが倒れたのか、元々横になっていたのか興味深いです。

写真⑤

写真⑥
断ち割って確認したところ、石棒の下位から受け皿となるような状況で土器が出土しました。この土器は埋設土器とは別の個体が用いられていることから、石棒を安定させるために意図的に置かれた土器と考えられます。  このことから、石棒は立っていたのではなく、横になった状態で土器内に置かれていた可能性が高いと考えられます。

写真⑦
環状列石を構成する大きな礫を取り外した直後です。石の直下から、特徴的な土器やきれいな石器などが見つかりました。 この出土状況から、礫を置く直前に意図的に配置した可能性や、環状列石を作る直前に何らかの祭りを行っていた可能性が考えられます。 酪農(3)遺跡の調査は10月下旬までの予定でしたが、多くの遺構や遺物が発見されたことから、11月下旬まで調査を延長することとなりました。これからも、興味深い遺構や遺物がたくさん発見されると想定されます。11月もHPを更新予定ですので最新情報をお伝えしたいと考えています。

2021年8月5・6日

現地見学会を開催しました

 8月5日・6日、酪農(3)遺跡の現地見学会を行いました。

 発掘調査現場では、現在、縄文時代後期初頭~前葉(今から約4,000年前)の環状列石や列石に伴う組石遺構、斜面捨て場の調査を進めています。見学会では、環状列石を構成する礫や、捨て場から出土した遺物などを、解説を交えながら間近でご覧いただきました。

新型コロナウィルス感染症対策として、遺物や写真パネル展示コーナーはご用意できませんでしたが、現場見学コース内にて出土した土器や石器を紹介しました。参加人数を限定しての開催となりましたが、約70名と多くの方にご来場いただきました。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。

別画面で当日配布資料をご覧いただけます。こちらをクリックするとダウンロードできます。(pdf形式:1.1MB)



特殊な遺物が出土しました。
  酪農(3)遺跡では、昨年度と合わせて、これまでに段ボール箱で約300箱の遺物が出土しています。その中でも、最近出土した面白い遺物を紹介したいと思います。
 穴が開いたお盆状の土製品と、4点の分銅形の土製品が出土しました。どちらの遺物も、これまでにあまり類例がない遺物と考えられます。お盆状の土製品は、土器の蓋、大型の円盤状土製品などの可能性がありますが、穴が開いているものは珍しいです。また、この穴の部分に分銅形土製品の先端がぴったり合うことや、お盆状の土製品と分銅形土製品のうち2点が捨て場の同じ場所から出土したことから、一緒に使っていた可能性もあり、注目されます。


現地見学会【終了】
むつ市酪農(3)遺跡 現地見学会のお知らせ

2021年7月21日

現地見学会開催のお知らせ

1.開催日時
 令和3年8月5日(木)・6日(金)
 【1回目】受付:10:30~10:50
      説明:11:00~11:15
 【2回目】受付:12:30~12:50
      説明:13:00~13:15
 【3回目】受付:13:30~13:50
      説明:14:00~14:15

2.その他
 〇事前のお申し込みは不要です。
 〇出入り口の開放は10:20~15:00までです。
 〇雨天等により見学会を中止する際は、青森県埋蔵文化財調査センターホームページで当日9:00頃までにお知らせします。来場前にご確認ください。
 〇詳細はこちらをご覧ください。



2021年7月5日

 昨年度、酪農(3)遺跡からは縄文時代後期前葉(約4,000年前)の環状列石が検出されていました。

写真①写真上方が北
写真①ー1

 今年度は環状列石と捨て場を調査対象として6月15日から発掘調査が開始されました。


写真①ー2

 新たに環状列石の外側に直線的に伸びる列状の配石を2カ所検出し、計3列あることが分かりました。

写真②

 また、列石内にある配石の調査にも着手しました。配石の内部と外側に土器を埋めている状況が分かってきました。

写真③

 斜面に形成された捨て場の調査では、縄文時代後期初頭から前葉までの土器や石器、土・石製品などが出土しています(写真④~⑦)。土器は破片での出土が多く、動物形の装飾品と思われるものが出土しました(写真⑦)。欠損状況から土器に貼り付けられていたものと推察され、形状からクマを模したものとも考えられます。 製品が出土するのは大歓迎なのですが。。。ここ最近でも現場のすぐ近くでクマの目撃情報があり、調査担当者としては発掘現場に現れないことを願うばかりです。

写真④

 

写真⑤

 

写真⑥

 

写真⑦

2021年6月15日

 むつ市酪農(3)遺跡の調査が始まりました。

調査区遠景(南から)

調査区の状況

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